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春の心地になりつつある三月。
少しは気が晴れると思っていた。
私を省いた彼女が不幸な顔をしていれば、少しは自信が持てると思っていた。
けど、彼女を前にしたとき、そんなのは幻想に過ぎないことを知った。
3年ぶりに会った彼女は、痩せて、綺麗になっていて、『大人』の女性になっていた。
高校のメンツで集まることになって、私は彼女がいるのを承知で誘いを受けた。
あっちは私が来ることを知らない。
さぞかし驚いて、さぞかし慌てるだろうと思った。そんな表情を見て、ほくそ笑んでやるつもりだった。
「遅れてごめんなさい!」
謝りながら、待ち合わせ場所に着くと彼女がいた。
遅れてくるのは計算のうちだった。先に待ち合わせ場所にいては、あとから来た彼女にドタキャンされかねないと思ったからだ。
明らかに顔色が変わった彼女の名前は、紺野晴美(こんのはるみ)。
元々高校は同じグループに所属していたけど、彼女によって私はグループから追い出しを食らった。
だから、今日会うメンバーのグループにいたのだけど、その一人が高校の生徒、全員を誘ったらしく、紺野は頷いたようだ。
グループが違うから当然、私と紺野のことなんて周りは知らない。
私が断るのも変だし、少し大人な格好をして私は集合場所に来た。
紺野はムカつくくらい綺麗になっていて、働く大人の女性になっていた。
彼女が良いところの商社でOLをやっていることは知っている。身につけているものも、私のより数段価値のあるように見えた。
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