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「久しぶりだよね! 今、何してるの?」
話を持ち出したのは紺野だ。
菊代(きくよ)がニコニコ笑いながら、紺野に答える。
「私、今、化粧品会社で働いてる」
「え? すごくない!? じゃあ、詳しいの?」
いつものように人懐っこい笑顔を浮かべながら、彼女は楽しそうに話す。
綺麗になったから余計に魅了される。
「今度、教えて! 私、化粧に疎くてさ……。化粧品とか全然わかんないんだよね」
バッチリ化粧をしているくせに何を言っているんだろう。
そう思っていると、来ていた幹太(かんた)が突っ込みを入れる。
「お前、化粧してんじゃん」
「いやいや、化粧してるから疎くないとかないから! 買ってる化粧品全部適当。化粧時間10分前後」
「え? まじ?」
「マジマジ。営業の仕事だから、化粧は嫌でもしなきゃいけないの! でも、ほら、良い化粧品知らないから荒れていく一方で……」
大袈裟にため息をつく紺野に、イラッとする。
何それ、化粧時間短いって言う器用アピールかよ。
「そもそも化粧嫌いだし。本当なら素っぴんがいい」
「でも、営業は化粧しないと大変だよね。私、冠婚葬祭だから、先輩とかうるさくて……」
「先輩がうるさいとか、恵美子(えみこ)大変じゃん!」
「そうなの! 私、冠婚やってるんだけど、化粧もそうだし、礼儀もマナーすんごく細かく言われて……」
「うわぁ、大人の世界だ……」
明るい表情でみんなを引き込んでいくところは変わらない。
私はムッとする。
私がここを選んで属してるのに、この人は乗っ取ろうとでもしているのだろうか。
そもそも、私に対して申し訳なさとか何もないのだろうか。
なんでそんな平然としてるわけ?
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