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「赤ちゃんって…。」
私は、オレンジジュースをゴクリと飲み込んだ。
「生まれてしまったんだ。時が止まっている最中に。けど、分娩室のドアは開けられなかった。なにせ俺も小さいからね!」
彼は起き上がって、床に座った。
常温に戻りかけた食べかけのケーキにフォークを刺す。
「そうそう、後から考えて思い出したの。分娩室からはいろんな声がした。モモ以外の、たくさんの大人の声だよ。」
彼はパクリとケーキを食べる。
彼の喉がケーキを通した音がした。
「なんでだろうね…分娩室だけ時が止まってなかったの。俺には分からないや。」
彼は喋りながら、次々とケーキを口に運んだ。
「俺は止まっている間、時計をみた。うっすら針の位置は覚えてる。それがこの時間。」
彼はフォークで時計を指差した。
11時59分。
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