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「何もいらないと思わないか?俺はモモが、モモが生まれたこの日をずっと、モモと過ごしたい。モモだけでいいから。他の人がいないようなこの世界で、モモと俺は死ぬまでこの3月32日を過ごしたい…。」
私は後ろを振り返った。
彼は満面の笑みだった。風も起きないこの世界で、彼の黒髪は全く揺れていなかった。
ただ、赤黒い目がわたしを見ていた。
月明かりが、彼の瞳を輝かせる。
「モモ?」
彼は美しかった。私にとって彼はもう、幼なじみなんて存在ではいられなかった。
彼がいるならいい?彼だけが側にいれば良い?
彼がいれば…。
私は、笑っていた。
カナタさえいればそれで良い…。そうだね!
こんな『誰もいない世界』、2人で過ごせるなんて特別すぎる。
私の中で、恐怖は歓喜に変わっていた。
彼の言葉が、私の心臓に深く突き刺さる。
…ありがとう。カナタ。
「ねぇ、昨日のモモが見た夢は、夢じゃないんだよ…俺が時を戻したんだ!凄いでしょう?」
彼は、そう言うと、私に手を伸ばしてくる。
私の手は彼の手に包まれた。
死んだ世界の中で、唯一の温もりが伝わって来た様な気がした。
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