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「なぁ、実晴」
「なんですか、聖司さん?」
俺が新聞を読んでいた間、テレビを見ながら洗い物をしていた実晴は手を止め、俺の方まで来てくれた。
濡れた手をエプロンで拭きながら、ダイニングルームの隣にあるリビングのソファーに腰掛けていた俺の隣に、実晴はチョコンと座った。
「来月だけどさ…2人で旅行行かないか?」
「来月、ですか?」
「そう、みんなと休みをずらして取って、2人でどっか遠いところにでも行かないか?」
8月上旬の今、俺と実晴は毎日会社に行っては夜は家で一緒にご飯を食べる、というごく普通の同棲生活を送っていた。
週末は近場に出かけたりしてたけど、2人で遠くに出たことはまだ一度もないことに気づき、俺は平然を装って実晴を旅行に誘い出した。
「いいですね!温泉とか、久しく行ってないので行きたいなぁ~」
実晴もうっとりとした目をして、旅行に賛成してくれ、俺は思わず実晴のことを抱きしめた。
急に抱きしめたからか、「きゃっ」と実晴が俺の胸の中でモゾモゾと動き、手や首筋からの実晴の匂いに俺の理性がギリギリを彷徨う。
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