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ミオンとリオン──ボクが去年のジャーダファミリー強襲任務の時にジャーダファミリーから救出した、イタリアの王族の娘とその従属の娘のミオン・ルーンとリオン・ヴァルフォアの事だ。
彼女達は未だに、王宮に馴染んでおらず、そればかりか何やら彼女達はボクらファブレットの人間を警戒している。
尤も、それを顕著に露わにしているのは、ミオンの方だ。
リオンの方はそうでもないようで、前に一度ミオンが居ない時に「君は警戒してないようだけど、大丈夫なの?」と訊けば、彼女は「まぁ、僕は周りの人の考えてる事が解りますから」と澄まし顔で言われた。
と、話が脱線したから、戻すけど。
ボクは、イア姉さんが二人の為に用意したというドレスを見た。
確かに、夜会なんかで女の子に着せるのは、原則としてドレスだ。 イブニングスーツを着せたりはしない。
だけど、と、ボクは考える。
恐らくミオンが気にしているのは、声だ。
ミオンの声は、去年まで続いたジャーダファミリーによるO.C.波の人体実験によって壊され、今では低い声しか出ない。
それを本人はコンプレックスだと思っているし、何より、もう声は戻らないだろうと諦めているからこそ、自分の中で生来の性別と声の性別の間で葛藤しているのだろう。
周りが気にしないように、と女の子物を勧めれば勧める程、ミオンはそれから遠ざかっていく。
かと言って、本人が望んでも居ないのに男の子物を用意するのは如何なものか。
ミオンとちゃんと話し合う事が出来れば、解決するのだけど・・・・・・難しいらしい。
「うーん・・・・・・ミオン、相当声の事気にしてるからねぇ。
ドレスは難しいかも。
リオンも、多分ミオンが着ないと着ないだろうし」
「そんなぁ。 折角、アリシア姉様と可愛いの見繕ってきたのに・・・・・・」
しょぼん、と肩を落とす、イア姉さん。
成る程、バートンで仕立てた服だったか。 道理で気合いの入った刺繍とか装飾がしてある訳だ。
バートンと言えば、このロンドンで屈指の一流ブランドの仕立屋。
王宮御用達の老舗で、創業から100年は経っていると言われている。
現在はイア姉さんが通っている学校の先輩が経営している。
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