第1楽章 気紛れな王女の誕生パーティー

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「仕方ないよ。 それ程、ミオンにとって“声”は大事な物らしいからね」 特にルーンの人魚姫物語のような噂は信じていないけど、ミオンにとっては声は大事な物だと言うのは、この一年でよく解った。 恐らくそれは、ボクの“右目”と同じくらいに大事な物なのだろう。 もし、ボクの“右目”が潰されたら。 それを考えただけで、おぞましさが体を巡る。 “右目”が在るからこそ、ボクは王位継承者候補に入っているのだ。 もし、ミオンの声もそれと同等の意味を持つなら? ミオンが「女子」であることを諦めようとしているのは仕方のない事なのかも知れない。 聞いた事がある。 イタリアで王位に就けるのは、体の一部に“ティア・クロス”がある女子だけ。 ミオンの声では、初見だとお世辞にも「綺麗な声ですね」とは言えない。 むしろ、性別を暴露されたら「女? あ、いや、失礼、あまりにも・・・・・・」と茶を濁すように言葉を濁してその場を去る自信がある。 とても、王位を継げるような声ではない。 彼女は国の奪還を狙っているみたいだけど、その頃には声は戻っているのだろうか。 「あー、えっと、なんだったかしら・・・・・・そう、ルーンの人魚姫物語ね! 綺麗な歌声で初恋の人を意識させる、って言う! 私、そのお話好きだったわぁ~」 あれこれ考えるボクの隣で、イア姉さんはそんな事を言った。 ミオンにとって声が大事な理由。 もし、人魚姫物語の伝説が本当なら? その上でミオンが既にその歌を誰かに聴かせていたなら? 「あぁ~! ボクはホンット、何でこう、この手の話に疎いかなぁ、もうっ!」 突然前触れなしにボクが頭を抱えて唸ったもんだから、イア姉さんが豆鉄砲を喰らった鳩の様に驚いた顔をして、ボクを見ていた。 「どうしたの、グレイ?」 「何でもないよ、こっちの話! それと、ボクも夜会には出るけど、ドレスは着ないからね!」 ボクは早口でそう言うと、立ち上がって直ぐに姉さんの部屋を出た。 その後ろでは姉さんが「そんなぁ~」と落胆したように言った気がするけど、多分、気の所為だよね、うん。 ボクは、ミオンを探す為に庭へと出て行った。 恐らくミオンは、私騎士団の訓練場にいる・・・・・・筈!
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