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「中川のせいじゃない。どっちみち駐車場まで傘なかったし。」
「でも、寄り道させたから。その分、寒い思いさせたから…」
「あー…。寄り道は、したね。でも、あの後ね。
ちょっと呼び出されて、寄るとこあったから確かに、あのまま寄り道した。
でも、そういうことなら、余計に中川のせいじゃないから、安心しろ。おつかれさまでーす」
そう言って、更衣室のある研究棟へ向かってスタスタ足早に言ってしまった。
あの後、あんな遅い時間から呼び出しって…誰と会ったのだろうか?
女?
そして、足早に、これからどこへ帰る?
実家暮らしかな?
ちゃんと病院へ行くのだろうか?
そうでなくても、自ら体調管理って言うくらいだから、早く家に帰って休んでくれることを願いながら、帰り支度を済ませる。
山崎が帰宅して休む、その側に、そこに看病する彼女とかいないことを願いながら。
想像するだけで、虚しくなってきた。
更衣室のロッカーをバタンと勢いよく閉めたら、大きなロッカーの扉の音が、誰もいない更衣室に響いたら、
そこに不安をぶつけて解消することしかできない自分に、さらに虚しくなった。
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