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翌朝、包埋室での待機指示があり、機械の前で山崎を待っていると、廣瀬さんに声をかけられた。
「大丈夫ですか?何か分からないことあったら聞いてください。僕で良かったらお手伝いします」
「ありがとうございます。このあと山崎さんが来てくださる予定なので、今は、大丈夫です。邪魔にならないように、ここで待たせていただきます」
「邪魔だなんて!そんな訳ないです!」
「あ、待ってるあいだ、私の方こそ、なにかお手伝い出来ることありませんか?」
廣瀬さんが、驚いたあと、包埋室を見渡してキョロキョロしながら考える素振りをして、苅部さんに助けを求めた。
「うーん…苅部さん、何かあります?」
苅部さんも、聞こえてるから、腰に手を当てて、仕事がないか探すように部屋中を見渡す。
「うーん…カゴ詰めは、今終わっちゃったからな…ないな、フフ…」
そう言って、笑った。
「あ!ごめんなさい、余計に困らせてしまいました!」
二人に謝ると、廣瀬さんも、にっこり笑って言った。
「そんなことないよ、良い子だね、中川さん」
「そんな…お役に立てず、すみません」
良い子だなんて、一つ上の先輩に子供扱いされた響きに、気恥ずかしくって、隅の壁の方へ移動した。
今日も、二人の優しい空気に包まれるのを肌で感じていると、やっぱり聞こえてきた。
ご主人様のサンダルの足音。
それに近づくと同時にドアのあける音が、ほら、やっぱり山崎だ。
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