第2章

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アジア部からアメリカ留学、帰国して欧州部、それからロンドン駐在という目まぐるしい経歴の戸川と、ずっと米州部の俺とは特に接点はなかった。 飲み友達になったのは、留学を希望していた戸川が俺にアメリカの大学のことを色々聞きに来たのがきっかけだ。 「今日は欧州部が新年会で居ないから暇で電話してきたんだろ?」 『暇じゃねぇよ』 尊大な物言いに見合うだけ頭は切れるし、表裏のない、気持ちのいい奴だ。 奥さんの成瀬さんは戸川の同期で、結婚前は経営企画室にいた。 亀岡先輩が上海駐在の間、高嶺の花といえば彼女だった。 昔は女に冷淡で、外では放蕩三昧だった戸川が妙に大人しいと思ったら、成瀬さんと隠密で付き合い始めていた。 俺の同期でアジア部にいた崎田の彼女だったのを、何だかんだで強奪したらしい。 ところがロンドン赴任の際に一度別れて一年間腑抜けになった後、片桐主任と成瀬さんの噂に奮起、昨年電撃結婚した。 とにかく強奪が趣味かと聞きたくなる、憎めない悪党キャラだ。
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