第2章

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『さっきの羽鳥課長の発言、何だよ。女って、篠田先輩また食い散らかし?』 「ああ、昔のお前みたいに?」 『昔はもういいだろ!』 耳の痛い話題に嫌味で応じると、唸るような返事が返ってきた。 昔の戸川を知っている俺は、今の一途な愛妻家ぶりが可笑しくて仕方がない。 彼女に知られたくないらしく、彼女がいない場所でも昔の話でいじるとめちゃくちゃ怒る。 今みたいに。 成瀬さんのことになると腑抜けにも猛獣にもなる、可愛い奴だ。 『亀岡先輩は元気?』 ところがそんな戸川を内心笑っていると、いきなり際どい話題で切り返されて今度は俺が詰まった。 「…なんでまた?」 『別に』 電話口でフンと笑う気配がした。 もしかしてこいつは千里眼だろうか?
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