第2章

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うちの社は入社後数年間は指導役が付くことになっていて、戸川の指導役が亀岡先輩だった。 人気絶頂の男女の組合わせ。 同じく人気絶頂の片桐主任の恋人である彼女が戸川に乗り換えるのではと、当時は注目の的だった。 でも実際のところ、二人の間には何の化学反応も起きず、互いに男女の興味は一切無し。 当時の戸川は超絶無感情男だったし、彼女は片桐主任ただ一人しか見ていなかったからだ。 彼女は言い寄る男を全てバッサリ切って捨てることで有名だった。 でもそのことを知らない新入社員の多くが彼女に憧れ、向こう見ずにもアプローチする。 “私、年下は対象じゃないの” ついに皆の前で吐き捨てられたこの言葉で、しつこかった一人が公開処刑のように振られてからは、言い寄る勇者は減っていった。 そんな中での抱きつき事件は様々な憶測を呼んだ。 亀岡先輩にとって、戸川は片桐主任を煽るのに適役だったのだろう。 片桐主任を嫉妬させるに十分なレベルで、尚且つ自分になびかない男と見越して。 彼女にとって、片桐主任以外の男の心は邪魔でしかないのだ。
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