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『そうだな。二月中で。他の奴に言うなよ』
どうしてこいつは物を頼む時まで上からなんだ?
その時、携帯が着信を知らせた。
「あ、電話かかってきたから。
四月厳守、だよな?じゃ」
『違っ、二月だ!おい…』
わざと聞こえないふりで切ってやった俺のほくそ笑みは、画面を見て固まった。
……知佐だ。
「ちょっと電話してきます」
羽鳥課長に一言残して、給湯室に移動しながら電話に出た。
「もしもし」
『陽一郎……ごめんね。会社?』
会社の女だと言って傷つけたことを思い出してチクリと胸が痛む。
「休憩時間だから大丈夫だよ」
あの時、別れると叫んだ知佐の言葉を俺もそのまま受け止めた。
俺も知佐も、元に戻ることはできないだろう。
もう俺の声も聞きたくないはずなのに、何の用なのか、知佐は黙りこんでしまった。
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