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「先輩」
「……」
さらにきつく、お布団を巻き付けた。
「…美紀」
この声…身体の中がジンとする。
篠田に名前を呼ばれるのがたまらなく好き。
もう一回聞きたいからわざと黙っていると、温かな息が耳元にかかった。
「美紀……美紀」
篠田は独り言のように呟いた。
口数が少ないぶん、なんてことない一言や仕草がゆっくりゆっくり私の中に染み渡る。
今まで彼は私を名前で呼ぶことを遠慮していたのかもしれない。
無理やり自分の色に塗り替えようとはしない人だから。
……身体の行為は最初から何の遠慮もないようだけれど。
「美紀」
「……何?」
少し照れて返事する。
「二人のこと、言ってしまっていいですか?高木に」
「……嫌」
「皆に漏れるのが嫌?」
「違うわ。逆よ」
篠田に向き直り、真っ正面から見つめる。
「もう、みんなに言っちゃうの。
高木さんだけじゃなくて」
「それでいいんですか?」
「もちろん」
拡声器で街宣するか、ヘリでビラを撒きたいぐらいだ。
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