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くるりと引っくり返されて押さえつけられると、まったく抵抗がきかなくなった。
「だって!篠田って叩けばホコリが出てきそうだったし!あっ……、やだちょっと待って」
「課長とはこっそり電話してるし、さっきの返礼もありますしね。
まあよく煽ってくれて、責任取って鎮めてもらわないと」
「んん……や…っ、そうよ、さっきの!」
はしたなく甘い声が漏れるので、悔し紛れに声を張り上げた。
「仕事があるんでしょ?課長に頼まれたやつ」
「あの程度なら二時間もあれば充分です。……ん?」
私の背中で篠田の唇が止まった。
「やられた」
「何が?」
お預けをくらって少し焦れながらも興味をひかれて聞き返した。
「あの契約、それほど急ぎじゃない。期限まで余裕があるんですよ。さっきは誰かのせいで気づかなかったけど」
「ということは……」
わざわざ休日の朝を狙ってかけてきたのは、確実に私が隣にいる時を狙ったと。しかも高確率で甘い時間。
なんせ自称“腹黒”だ。
私に電話してくるのも、篠田が残業して私が一人でいると分かっている時だけだし。
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