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*美紀目線です*
「ん……」
暖かな腕の中でうっすらと目を開ける。
フローリングの床には、カーテンの隙間から差し込む秋の朝の日差しが細い筋を描いていた。
昨夜のけだるさが残る身体で寝返りを打ち、まだ寝息を立てている篠田の胸に顔をうずめる。
「何の音……?」
彼の肌の匂いに包まれてもう一度目を閉じたのに、先ほどから耳に侵入してくる何かの音が、沈みこもうとする意識の邪魔をする。
「篠田…」
彼をそっと揺すった。
「電話よ。…篠田」
「ん……?」
眉間に皺を寄せて少し呻いた篠田が、渋々といった様子で目を開けた。
「土曜の朝なのに……」
そう呟いた後、彼は突如跳ね起きてサイドテーブルの携帯をひっ掴んだ。
米州部に所属する彼には、土曜の朝に現地の取引先から電話が入ることが時々ある。
時差があるので、現地はまだ金曜なのだ。
「ハロー……何だ、課長ですか」
寝ぼけて相手も見ずに慌てて電話をとった篠田が、気が抜けたように声のトーンを下げた。
相手はどうやら羽鳥課長らしい。
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