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「いや、別に聞かれてまずい訳じゃ……俺一人ですって。
そんなことより用件は?」
背後の私の陰気なオーラでも感じたのか、篠田が無理やり話題を変えた。
早くオープンにしろという先日の課長の電話を思い出す。
“害虫駆除は一匹一匹潰すよりバルサンだよ”
その時は課長の例えに吹き出したけれど、今は笑う気分ではない。
「ああ…あの条項ですか…。先方に削るよう交渉してるんですが、難しそうですね」
脇に置いた鞄から資料を取り出してすっかり仕事モードになった篠田の背中を睨み付ける。
“あれは違う”とか“聞かれてまずい”とかって何よ?
お仕置きしてやりたくなった私はそっと起き上がり、篠田の背中ににじり寄った。
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