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「先輩、どういう風の吹き回しですかぁ?」
「何が?」
会社近くのイタリアン。
梨香子とよく通った店に、今日は小椋さんと来ている。
目的は、アレだ。
産休中の梨香子には援護射撃を頼めないので、私は一人で決闘の場に臨んでいる。
「だって奢ってくれるなんて、あまりなかったじゃないですか」
「失礼ね!何回もあったでしょ」
「そんなにありましたっけ?
だって先輩、夏ぐらいから仕事の後ダッシュで帰っちゃうじゃないですか」
「…そうだっけね」
“夏ぐらいから”
小椋さんの指摘にギクッとした。
篠田と半同棲を始めた頃だ。
土日だけじゃ足りなくて平日も泊まっているうちに自然とそうなった。
同棲なんてと昔は思っていたけれど、篠田が車で家まで送ってくれた降り際、寂しくてたまらなくなるのだ。
だってあの無愛想な篠田が、すごく優しくキスしてくるんだもの。
出勤が早い彼のために、朝食を用意してあげたいな…なんて。
「先輩、サラダの残り、食べちゃいますね。…先輩?」
「…あっ?うん」
宙を眺めてポケーッとしていた自分に気づいて我に返る。
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