おまけ②小椋嬢、吠えるの巻

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「分かった! 先輩、彼氏できたんでしょ!」 「ごふっ」 いきなりの図星に、口に含みかけていたワインでむせた。 「ほらぁ動揺しちゃって、絶対図星だ!」 まだオーダーの品も揃っていない腹六分目。 食べさせるのも飲ませるのも充分ではないのに、裁きの時は来てしまった。 「ちょっとちょっと!紹介して下さいよぉ」 「いや……実は」 「まさか、社内ですか!」 いよいよだ。 喉がゴクリと鳴った。 「…そうなの。実は」 「うっそ!誰ですか誰ですか?」 「それが、実は」 「あーやっぱちょっと待って! 私、当てますから!」 小椋さんが耳を塞いで叫んだ。 こちとら何度も勇気を振り絞っているというのに、何度も会話を挫かれる。 「先輩だったらエリート部門にこだわりそうですよねぇ。 だったら人事?法務?経企室?」 「……いや」 「えー、じゃあ国内営業?総務?デバイス?あっ、それか支社?」 「違うの。実は」 「待って待って! あとは……まさか海事ですか!」 「うん。実は」 「ギャーー!私の知ってる人ですね!」 このテンションがすべて怒りに向けられたらどうなるのか。 冷や汗がタラリと背中を伝った。
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