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「先輩の好みは片桐王子だから……、ひょっとして上海の崎田君を小野寺唯から強奪したとか」
「まさか」
小椋さんはワイングラスをビールみたいにくいっと空けた。
そんな飲み方では酔いそうだ。
「なーんだ、残念。私、小野寺唯が大っ嫌いだったんですよぉ」
「小野寺唯って?よく知らないんだけど」
「あ、知りません?小野寺常務の娘で元欧州部ですよ。めっちゃ押しまくって崎田君と結婚したんです」
「ああ、私が駐在だった頃のことね。そういえば梨香子がそんなこと言ってたわ」
篠田と同期にあたる崎田君とは上海の引き継ぎで初対面だったけれど、何と言うのか、光るものがない印象しか残っていない。
「そうだ、戸川君のお相手の成瀬さんっているじゃないですか」
噂好きな小椋さんのお喋りは次々と話題を転じて続く。
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