1363人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
『いやー、祝杯だな!ほら高木さんも行こう』
上機嫌で戻って来た米州部長の声で、肝心の床上手の存在を忘れていたことに気づいた。
床上手はひきつった顔で元いた場所に立ち尽くしていたけれど、部長に促されるまま、力なく連れていかれてしまった。
『うわ、高木カワイソー。部長の二次会だけは行きたくねぇな』
『タダ酒でも煙草がすごいしね』
『おら独身組中野!お前も来い』
『えっ?いや部長、俺はえーと』
結局、中野君が抵抗している間に私はこっそり逃げ出して、地下鉄の中で一人で泣いた。
***
「週明けの月曜さ、篠田があんまり無表情だから笑えたよな?
誰も突っ込めなかったろ」
「よく言うよ。中野君はストーカーだったじゃん」
あれから一週間、中野君はお昼も仕事後も篠田君に付きまとって、情報をほじくり返していた。
今日はその戦果を教えてくれるらしい。
「女王様、あんな鉄仮面のどこがいいんだろうな」
「それがいいんだよ。誰かみたいに感情だだ漏れは周囲が萎えるっつーの」
「俺のこれは仮面なんだからな!
内に秘めたものがあるんだよ、お前にゃ分からんだろうけど」
「分かりたくないし」
最初のコメントを投稿しよう!