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長い沈黙の後、高木が仕切り直しのようにカクテルを一口飲んだ。
『主任がお付き合いされてる方って社内ですか?社外ですか?』
『社内だよ』
(初耳じゃぁ!)←中野の心の声
『ねぇ、主任。
私……秘密守れますよ?』
ようやく口を開いた篠田の反応に手応えを感じたのか、高木がクスッと笑って篠田の腕に触れた。
『その方にも、職場にも。だから一度だけ、私に思い出を下さ──』
『高木さん』
不意に篠田が遮った。
『これ、本物だと思う?』
『えっ?』
篠田がオードブルの上に乗っかったキャビアを箸でつまみ上げた。
『偽物だよ。食べなくても分かる。こうして安価に提供されるものはね』
『……』
『これも悪くないけど、本物を求める相手の前に山盛りにしても、要らないものは要らない』
キャビアもどきを皿の脇に押しやって、篠田が平板な声で言った。
『そういうものでしょ』
***
「きっつー」
「だろ?俺、寒気したぞ。一瞬、篠田がめっちゃ嫌な奴に見えた」
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