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中野君はびしょ濡れになって、突然のことにただ目をひん剥いて固まっている。
とんでもないことをやってしまったのは分かってるけど、迸る感情は止められない。
「落ち込んでないとかさ、アンタに何が分かるのよ」
中野君の頭に乗っかっていた氷がコロンと落ちた。
「顔が笑ってるからって心までそうとは限らないじゃん!
あたしだってさぁ、本当は落ち込んでてもさぁ、笑っ…」
唇がわなわな震えて中野君の顔が霞んできた。
「いっつもいっつも、あたしのことボロクソ言って」
「小椋、おま、泣い…」
誰からも大事に思って貰えない。
私だって傷つくんだ。
「言われなくてもそんなこと、あたしが一番分かってるよ!」
何か投げつけてやりたいのにもうチューハイは空だった。
「小椋…うわっ?」
わずかな理性でグラスを投げつけるのだけは我慢して、お皿に残っていたキャベツを掴んで投げつけると、後ろも見ずに駆け出した。
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