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『僕がアメリカの次期交代要員なのは部長もご存知かと思いますが、任期中、彼女をお借りしたいんです』
周囲の口がポカンと開いた。
『俺、飲み過ぎたのか?耳が…』
『しっ、うるさい』
隣の中野君の足を踏んづけた。
『彼女が不可欠なポジションにいることは承知しています。でも、もしそういうことになりましたら、ご迷惑をおかけしますが調整をよろしくお願いします』
『……あ…と、ああ、おめでとう、なのかな』
『いえ、まだ先の話ですし、あくまで僕の希望です。その時の彼女の意思が最優先ですから』
篠田君は接待先にしか見せないような笑顔で一礼した。
『じゃ部長、お疲れ様です。お先に失礼します』
『…お疲れ様です、部長』
美紀先輩、あれだけカミングアウトするんだと息巻いていたのに。
頬を赤らめて篠田君を見上げてる様はなんだかティーンエイジャーみたいだった。
『なんだありゃ……篠田と…女王様が』
皆にも挨拶してから駅に向かって歩いていく二人の背中を指差しながら中野君が喘いだ。
『おおーぃ!篠田くーん!今の本当かぁー!』
フリーズが解けた米州部長が、空気も読まずに二人を追いかけていった。
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