第4章:日、出づる国の動乱

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「……変わらぬな。いや、若返ったというべきか。以前魔物を討伐した際は、もっと妖艶なおなごだったものだが……」 東洋風の、趣のある造りのアズマ城。 その最奥、王の間で、国王アズマは鎮座していた。 「そなたは老いたの。妾のように転生の秘術のひとつも使えれば、あの頃の壮健さを取り戻せように……」 広々とした畳の間の中央で。 侍女が差し出した座布団の上に仁王立ちとなり、ヨハネはアズマに憎まれ口を叩いた。 「して、何の用だ?……こんな極東のつまらぬ国など、観光以外で訪れるには物足りないだろう。」 アズマは昔話などする気もなく、単刀直入に本題を問う。 それは、ヨハネとの長い付き合いの中で生まれた、ふたりの間の暗黙のルールのようなものだった。 『余計なことは言わない、訊かない。』 かつてアズマ国に強大な魔物が現れたとき、出生も素性も不明だったヨハネは、手を貸す代わりに若かりしアズマ王にそう告げたのである。 「この国の地下に眠る、鉱石が狙われておる。」 ヨハネも、問いの答えを飾ることなく告げた。 「鉱石……?」 「そなたらの間では『秘石』と呼んでおろう。『封魔石』のことじゃ。」 封魔石。 かつて魔物を討伐し、封印したヨハネとアズマ。 ヨハネの強大な魔力をもって、魔物を封印したのだが、たまたまこのアズマの地の『とある鉱石』は、魔力を増幅し、魔物を封じるのにこれ以上無い媒体となった。 「しかし……あの石は、魔力を増幅する、または魔物を封じる媒体となりうる……と言うだけではないか。防具の素材としては脆すぎるし、武器の素材にしては加工しづらい。呪術師や魔導師の間でしか価値を見いださない石であるぞ?」 アズマも、疑問に首を捻る。 そのような価値の高くない鉱石など、貿易でも手に入る。 「譲って欲しい」 その一言だけである程度の量の譲渡は約束される。 そんな石なのだ。 「疑問はそこじゃ。何故そのような石を狙うのか……しかも軍まで用いてのぅ……。」 ヨハネは、王の間をぐるぐると回りながら考え込む。 「……なんだと?」 そのヨハネの『ひとこと』に、アズマの目の色が変わる。 「軍……?」 ヨハネは、しまった、と頭を掻いたが、仕方ない……と口を開いた。 「アズマよ……この地は戦場になるぞ。」
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