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第1章:イノチの意味は
エリシャ自治州。
かつてこの地を大飢饉から守ったと言われる聖女エリシャの名を冠して生まれた自治州。
戦争を嫌い、しかし自国を守るために軍備を整えてきた。
その軍は、『エリシャ白騎士団』と呼ばれ、大陸随一の守備力を誇るとさえ言われてきた。
自治州の代表・オスカーは、かつて帝国の騎士団に籍を置いていたが、もともと争いを好む男ではなかったため、脱退後、エリシャ自治州に流れ着き、その政治手腕で代表にまで登り詰めた。
そんなオスカーが、やがておとずれるかもしれない戦争の中でも、自国の民は守りたい。そう願って設立したのが『エリシャ白騎士団』なのである。
オスカーは、幾度となく自治州を守ってきた。蛮族から、獣から、時には反乱分子から……
そんな彼を、民は親しみを込めてこう呼んだ。
『エリシャの盾』と。
オスカーは、老若男女関係なく、有能な者は将として、また官として取り上げた。そんな彼の城は民衆にも開かれ、活気と笑顔で溢れていたのだ。
そんな彼に取り上げられた女がひとりいた。
名をアイン。その美しさと剣の腕で、彼女は『白騎士団の華将軍』と呼ばれた。
『エリシャの盾』と『華将軍』。
このふたりが、今のエリシャ自治州の象徴であった。
平和で、守備に長けた自由な国。
物語は、ここから始まる……。
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