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一方、ローランド王城では。
シエラをはじめとする、北の砦討伐軍が編成されていた。
先陣をジェイコフ。その後ろをシエラが進む。
砦内部に侵入したタイミングで、ローランド兵の一軍が、一斉に突撃をかける。
「それだと……ジェイコフとシエラで相手軍勢の殆どを相手にすると言うことか?」
心配そうに訊ねるローランド国王。
ジェイコフは、淡々と語る。
「この編成……先陣を切る者は、私しかおりますまい。」
確かに、ローランド兵の力を考えると、ジェイコフとシエラの力は抜きん出ている。
(剣の力は、おそらく殿下の方が上ではある、が……)
若くして『剣豪』を凌ぐ力をつけたシエラ。しかしジェイコフは、シエラを先陣にするわけにはいかなかった。
「シエラ殿は、私の後方にてサポートをお願いしたい。……御心配は無用。」
シエラも、そんなジェイコフの気遣いを察していた。なにより、ジェイコフの力を知っているからこそ。
「はい。貴方のサポートを致します。……まぁ、ガーネットの矢にだけ注意を払えば、さして難しい事では無いと思いますけど……」
不安は1つだけ。
ガーネットの放つ『矢』である。
一撃必中。
そんな言葉が相応しい、彼女の矢。
それさえ凌げれば、砦攻略は成せるであろう。
逆に……その矢を凌げなければ、必ず死はこちらに訪れる。
(意外だったのは、彼女が宰相派についたこと……。なにかきっと、裏があるはず。ガーネットと話したい……。)
しっかり話を聞ければ、ガーネットと戦わなくて済むかもしれない。しかし、そのためには……
(ガーネットを倒さず、接近して説得……なんて難しいの……。)
相手が手練れであればあるほど、またその相手を死なせたくない、と思えば思うほど。
そのミッションの難しさが、シエラの背にのし掛かる。
「……立ち止まっていても事は進まない。……夜が明けたら、砦へ向かいましょう。」
シエラは決断する。
犠牲は出したくない。
しかし、それも綺麗事であるのなら……
「犠牲は、最小限に……抑えましょう。もともとは、同じ国の……民なのだから。」
国を失ったシエラが、隣国の民のために剣を取る。
2度と、同じ悲しみを味わうことが無いように。
この穏やかな国の民が、無用な涙を流さないように……。
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