第3章:ローランド王国の内乱

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一方、ローランド王城では。 シエラをはじめとする、北の砦討伐軍が編成されていた。 先陣をジェイコフ。その後ろをシエラが進む。 砦内部に侵入したタイミングで、ローランド兵の一軍が、一斉に突撃をかける。 「それだと……ジェイコフとシエラで相手軍勢の殆どを相手にすると言うことか?」 心配そうに訊ねるローランド国王。 ジェイコフは、淡々と語る。 「この編成……先陣を切る者は、私しかおりますまい。」 確かに、ローランド兵の力を考えると、ジェイコフとシエラの力は抜きん出ている。 (剣の力は、おそらく殿下の方が上ではある、が……) 若くして『剣豪』を凌ぐ力をつけたシエラ。しかしジェイコフは、シエラを先陣にするわけにはいかなかった。 「シエラ殿は、私の後方にてサポートをお願いしたい。……御心配は無用。」 シエラも、そんなジェイコフの気遣いを察していた。なにより、ジェイコフの力を知っているからこそ。 「はい。貴方のサポートを致します。……まぁ、ガーネットの矢にだけ注意を払えば、さして難しい事では無いと思いますけど……」 不安は1つだけ。 ガーネットの放つ『矢』である。 一撃必中。 そんな言葉が相応しい、彼女の矢。 それさえ凌げれば、砦攻略は成せるであろう。 逆に……その矢を凌げなければ、必ず死はこちらに訪れる。 (意外だったのは、彼女が宰相派についたこと……。なにかきっと、裏があるはず。ガーネットと話したい……。) しっかり話を聞ければ、ガーネットと戦わなくて済むかもしれない。しかし、そのためには…… (ガーネットを倒さず、接近して説得……なんて難しいの……。) 相手が手練れであればあるほど、またその相手を死なせたくない、と思えば思うほど。 そのミッションの難しさが、シエラの背にのし掛かる。 「……立ち止まっていても事は進まない。……夜が明けたら、砦へ向かいましょう。」 シエラは決断する。 犠牲は出したくない。 しかし、それも綺麗事であるのなら…… 「犠牲は、最小限に……抑えましょう。もともとは、同じ国の……民なのだから。」 国を失ったシエラが、隣国の民のために剣を取る。 2度と、同じ悲しみを味わうことが無いように。 この穏やかな国の民が、無用な涙を流さないように……。
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