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「それで?……ゼロは将来何になりたいの?」
酒場にて。
骨付き肉をガツガツと食べるゼロに、サラダをつつきながらアインが問う。
「あなたほどの実力があるなら、白騎士団でだってやっていけるわ。いつかは、私と一緒に……」
「ガラじゃねぇ。俺が騎士って質かよ。第一、俺は姉貴みたいに魔法が使えねぇ。」
肉を頬張りながら、ゼロは騎士団入りはない、とアインに断言する。
ゼロには、生まれつき魔力と言うものが備わっていなかった。
人間、誰しもわずかながら魔力を持ち、訓練することで『魔法』へと昇華させていくのだが、ゼロにはその基となる『魔力』自体が備わっていなかったのだ。
故に、ゼロは魔法が使えないと言うハンデを越えるため、剣技を必死に伸ばそうと鍛練してきた。
そこに立ちはだかったのが、姉であるアイン。
生まれながらにして魔導師並の高い魔力を持ち、剣技においても、鍛練を欠かさず、その素質の高さでゼロを凌いだ。
加えて内政・戦術の勉強も怠ることなく、アインは小国の軍師では、比較になら無いほどの戦術の才を持っていた。
完璧すぎる姉の日陰に育ち、ゼロは騎士団という輝かしい道を自ら閉ざしてきたのだ。
「白騎士団は……いや、この自治領は姉貴と領主がいれば大丈夫だろ。俺は、町人その1でいいさ。姉貴とこうやって飯食って、馬鹿話してるので満足。」
かといって、ゼロはアインに負い目を感じることもなく、また姉として慕っていた。完璧すぎる姉は、その力を鼻にかけることもなく、日々向上しようと鍛練や学習を怠らなかったからだ。
『姉には勝てない』
適当なところで限界という境界線を引いてきたゼロにとって、どこまでも努力し続ける姉は、存在だけで眩しく見えたのである。
「まぁ……あなたが悪い組織や団体に属さなければ、姉としては満足だけど……」
姉は姉で、ゼロの生き様を否定することはしなかった。
遊ぶこともなく、手を抜くこともなく日々生きて、気がついたら民の信頼を一身に受ける存在となった自分。
ゼロには、自分と同じ道を辿って欲しくなかった、と言うのが本音である。
もう少し、ゼロには自由に生きて欲しい。それが口に出さないアインの本音であった。
「ゼロ、どう生きてもいいわ。ただ、間違ったことだけは、しないでね。」
「なーに遺言みてーなこと言ってんだよ」
酒場の夜は、更けていった。
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