第1章:イノチの意味は

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「ふーっ、食った飲んだ!」 腹をポンポンと叩きながら、満足げな表情のゼロと、 「あなた……食べ過ぎよ。太ったらせっかくの美男が台無しよ?」 呆れ顔のアイン。 酒場から家までの距離はそう遠くない。人通りの少ない道を、ふたり歩く。 「姉貴よぉ……」 ふと、ゼロがアインに声をかけた。 「なぁに?」 珍しいこともあるものだ、と興味深く耳を傾けるアインに、ゼロはそっぽを向いて言う。 「無理……すんなよな。別に姉貴が将軍じゃなくてもよ……無事に帰ってくれば、俺はそれでいい。」 日々の激務の事を思ってだろうか。ゼロが珍しく、アインを気遣った言葉を発した。 「……心配?」 胸がいっぱいになったアインは、わざといたずらっぽくゼロに問う。 「あ?……別に。このままだと華将軍が、嫁の貰い手のいないゴリラ将軍になりかねないからな!そっちのが心配だ!」 笑いながら先を走るゼロ。 「なんですって!?……まったくもう……。」 怒るふりをしながらも、最後には笑顔になるアイン。 冗談だとわかっていた。 昔から、思ってもいないことを言うゼロは、決して自分と目を合わせない。 だからこそ、ゼロの言葉の真意に気づくことがこれまで出来ていた。 どのくらい本気なのか、冗談なのか…… それは、ゼロの性格のような正直な視線が、しっかりと語ってくれていたから。 ふと、先を走っていたゼロが足を止めた。 「……どうしたの?」 アインはゼロに追い付き、問う。 「あっち……なんかおかしくねぇか?」 ゼロの視線はアインに向くことなく、真っ直ぐ北の方角を見据えている。 「……おかしい?」 アインにはまだ、状況は読み込めていない。 「あの影……動いてるぞ。……軍隊じゃねぇか?」 遠くに見える影。アインはそれを林の影だと思っていた。それをゼロは、軍隊だと言う。 「姉貴!宮殿に戻れ!オスカー様に知らせてこい!俺は、もう少し近くで見る!」 そう言って、突如走り出すゼロ。 「ゼロ!!待って……!」 引き留めた頃には、ゼロの影は遠くなっていた。 ゼロの勘は、アインが驚くほど鋭い。そんな彼があれほど取り乱しているのだから…… アインは踵を返す。 そして全速力で、宮殿へ走った。
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