第3章:ローランド王国の内乱

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深夜。 ゼロは、砦の北にいた。 小さな、砦と言うにはあまりにも粗雑な作りのそこに、数人の民がいた。 「なーにが、国のために、だよ……屑が。」 手錠で後ろ手に縛られ、拷問された様子がうかがえる、数人の男女。 痩せ細り、生気は失せ、ただ「生きている」状態。 食事と呼ぶにはあまりにも雑な食糧を地面に撒かれ、水は飲まされるのではなく、かけられた。 ぎり、とゼロの奥歯が音を立てる。 「お願い……あの人だけは……助けて……」 兵士のひとりにすり寄る女を、まるでゴミをよけるかのように蹴り飛ばし、 「ゴミが私に触れるな!」 と罵声を浴びせる兵士。 泣き声とも、悲鳴とも取れる呻きをあげながら、地に突っ伏す、女。 その背に容赦なく、鞭が振るわれる。 「反省しろ!身の程をわきまえぬ、ゴミどもが!」 何度も、何度も打ち付けられる背は、まるで女のものとは思えない、ただれて醜いものであった。 「もう、殺しても良いんじゃないか?」 兵士のひとりが、鞭を持つ手を止める。 「どうせ、宰相派に入れられれば抜けられないんだ。入った時点で、人質など用済みだろう?……あのガキみたいに、手遅れのやつもいるし、ひとりもふたりも変わらんだろう?」 醜い笑顔で、兵士が奥を指差す。 そこには、 まるで雑巾のようにボロボロになった、少年の姿があった。 兵士が、突っ伏す女を無理矢理仰向けにする。 その手には、鞭ではなく槍が握られていた。 驚きと恐怖で言葉がでない、女。 兵士は血走った目でその様子を見て笑うと、 「一度、無抵抗な女を貫いてみたかったんだよ……」 槍を、振り上げた。 「……あの世でやれよ、バァカ。」 振り下ろそうとしたその視界に、ゼロがいた。 「………………え?」 現状を理解するより早く、兵士の身体は横たわっていた。 真っ赤な血が、そんな兵士を染め上げていく。 「ちょ……待って……死にたくない……。」 ふるふると身体を震わせ、命乞いをする兵士。 それを冷めた目で睨み付け、ゼロが言う。 「……何人殺した?二人か?三人か?……なら、お前は……四人目だ。」 兵士の最期を見届けることなく、他の兵に向かって歩くゼロ。 猛るもの、怯えるもの…… 様々な表情が、一斉にゼロに向けられる。 「……お前らは……どうする?俺から見れば、全員……」 その目には、怒りがこもっていた。 「……ゴミクズだけどな!」
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