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「はぁ~。みぃんな違って、みぃんな綺麗だ」
うっとりと甘いため息をつく。
誰かが部屋に入って来たことにも気が付かないほど夢中になっていた俺は、「ちょっと!」という大きな声にビクッと肩を震わせた。
振り返ると、腕を組み、仁王立ちしている彼女がいた。
「芹理奈、どうしたの?」
間抜な顔で彼女を見ると、「どうしたのじゃないわよっ!」と、芹理奈様がお怒りになられた。
頬を膨らませ、大股で近付いて来た彼女は、持っている箱を俺の目の前に突き出した。
「え?」
よく見ると、その箱は有名なパティスリーのもの。
更にポカンとする俺を鋭い目つきで睨んだ。
「今日は明人くんの誕生日でしょ!」
え?
ちょっと待て。
慌ててカレンダーに目をやる。
今日は五月二十九日。
いけいけGOGO! 肉の日。
確かに俺の誕生日だ。
そういえば、何カ月も前からこの日は空けておいてって言われていたような気がする。
タラリと滴る汗を拭い、彼女の顔を恐る恐る見上げた。
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