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第二章 野獣たちに、お仕置きを!
1・
厚生労働省。
マトリのチームリーダーは夏子の辞表を受け取り、蒼くなった。
夏子が謹慎処分を受けていた一か月の間に、驚きの進展を見せた麻薬捜査。警視庁の捜査本部が手を拱いている、刺青殺人事件との繋がりが見えて来たのだ。
合同捜査も視野に入れた話し合いが、マトリと警察上層部の間で進められている。
ところが!捜査の重要なカギを握る夏子に起った異変。
一か月の謹慎が解けてみれば、部下は何と黒津の姐。極道の親分衆が見守る中で、三々九度の盃を交わした後で。なんと盃を割って渡世の妻。上層部に対して、速やかには何も言えないリーダーの苦悩は深い。
夏子からの連絡を受けて、言葉もないが。捜査本部との話し合いの結果を踏まえて、相談しなければならない立場のチームリーダーは、夏子に囮捜査の協力を申し入れた。
刺青殺人事件と夏子の肩にある青い薔薇の刺青の関連性を熟知している彼を於いては、説得出来るもののない話だった。
捜査協力を申し入れた彼は、なんとか夏子から承諾の返事を取り付けた。
そして今日。夏子の登庁を待って、いよいよ囮捜査を実行する予定だった。
打ち合わせの為に、警視庁から捜査一課の刑事を呼んでいるリーダーは、夏子の登庁を待っていた。
黒津組の屋敷では!
「今日は辞表を出して、最後の挨拶をするから一人で登庁したい」、と夏子が言うから仕方なく、清次は黙って出して遣った。
だが、不安だった。
野獣どもが手を出した女の中で、夏子は跳びぬけて美しいと知っている。
清次は妹を失ってから、妹の身に起こったおぞましい事件を調べ抜いた。
警察が何もしてくれないと解ってからは、極道のその筋を使って男達の身元まで突き止めている。
何時かは、必ず仕置きしてやる積もりだった。だから奴等の事は殆ど知っていた。
今は夏子を、その腕の中に包む様にして守っている清次。
そして夏子は清次に護られている暮らしのせいか、更にしっとりとした女らしい美しさを増した。
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