第二章  野獣たちに、お仕置きを!

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 元気で勝気な夏子が可愛くて堪らないから、「帰って来るまでは安心出来ない」、と気が立っている清次。組の男達は薄氷を踏む思いて、そんな清次を遠巻きに見ていた。  思わず苦笑いの鬼頭。  「本気の恋を通り越して、今や骨抜きですな。マトリの女は、怖いね」  夏子を姐に迎えることを最初はたいそう反対していた鬼頭も、この頃では何となく認めているらしい。  黒津組の稼業は昔から口入れ屋だが、清次が嫁を得て落ち着いた事もあって、組の力が増している成果を認めたものらしかった。    野獣達が女を狩るゲームを始めて、十年以上が経つ。  大学生だった若者は、今や社会的な地位のある男になっていた。地位が上がると責任と義務が増え、ストレスも増大する。  それが彼等の狩りを楽しいお遊びから、生きるのに必要なゲームに変化させた。  嘗ては・・半年に一度もやれれば、十分に満足だった。  しかしここ数年。三カ月に一回のペースで、獲物が必要になった。手口も以前から見たらずっと頭脳的で、残酷になった。  ここ十年の間に、多くの獲物を楽しんだ。  その中で、何回も玩具にしたい女を何人か知った。  特に最も気に入った女が三人いたが、一人は自殺し、一人は海外に逃げた。  海外に逃げた女は、連れ戻すのに手間と金は掛かったが、それでも二回楽しんだ。  だが医者の娘で・・行方不明のあの女。  男達が二回目を楽しんだ後で、行方を晦ました娘だ。  浅葉喜十郎という老人の保護を受け、隠れ場所に居たのを確認したあの時から七年間がたつ。その間、一向に行方が分からなかった。優秀な探偵を雇って調べさせ、最近になってやっと詳しい情報を得たのだ。  女は厚労省のマトリで、潜入捜査になっていた。上手い逃げ方を選んだものだと感心した。  普段は国家権力に守られ、素性も行先も隠されているから全く解らない。  だが、落とし穴が一つだけある。  厚労省に登庁する時には、本人が現れる。滅多にないチャンスだが、その時を辛抱強く待った。  そして今日、やっとその時がやって来たのだ。
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