7.Melty touch

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「…なんだ?」 久々に聞くナカダ氏の声は不機嫌で、 私を思いっきり委縮させる。 「明けましておめでとうございます。 こ、こ、今年もよろ…」 「用件を言え」 新年の挨拶すら許してくれないのですか。 怯えながらそう抗議すると、 ナカダ氏は呆れたようにこう答えるのだ。 『仕事が絡めばそれなりに優しくするが、 今の俺はプライベートで。 お前にへつらう理由など無い。 貴重な時間が勿体ないから、 早く用件を言え』と。 えっと。 そりゃあ甘々な空気は 期待していなかったけど、 私たちもう一線を超えた仲ですよね? あ、それとも照れているのかしらん。 …などと良い方に解釈した自分が憎い。 この頑ななナカダ氏を動かすには、 『緊急事態』にでもならない限り無理だ。 しかし、この日常にそんなゴロゴロと 『緊急事態』は転がっていない。 ううむ、何か無いだろうか。 「…緊急事態、緊急事態」 小声で呟いたつもりだったのに、 最近のスマホは高性能過ぎて その声を全て拾ってしまったらしい。 「はあん?緊急事態だと!? どうした、何か事件かッ!?」 「……」 黙ったのは、 次の言葉が見つからなかったせいで。
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