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夏休みが終わって、私の高校2年のバケイションも寂しいまま過ぎた。
アルバイトもしてたのに、言い寄ってくる男の子たちは好きでもない子ばっかりだった。
いいなって思う子は、100%彼女がいる。
もういい加減このパターンは嫌になってくる。
彼女がいたら、もうダメなの?っていつも思う。
だけど告白したって、『オレ、彼女がいるから』って言われると何も言い返せない。体(てい)よく断られてるって感じ。
それって毎回のことだけどすごく悲しくって、そのうち彼女がいる男を自然と心が避けるようになってる。
だけどいいなと思うほどの男なんて、やっぱり絶対彼女がいるのだ。
……認めたくないけど…何か、うまくいかない連鎖が自分の中で起こってる。
夏休み前に告白した『海都』。
あいつだって、学校が始まってみたら森川と急接近してる。
というか、もうどう見てもラブラブ。
人の幸せを見ると、虚しい私としては妙に落ち込むのよね…。
「あーあ!彼氏欲しいよ!いい加減!」
「果凛、切実だね」
昼休みも終わりそうな時間。
私と亜由美はD組の前の廊下から、外を見ながら喋ってた。
「亜由美はそう思わないの?」
私と同様、亜由美も今は彼氏がいない。
だから夏休みは結構一緒に遊べたし、私としてはとても心強かった。
「うーん。別に~…。無理矢理に作ろうとは思わないしー…」
冷静に言われて、何だか自分がちょっと恥ずかしい。
「ホントにー?あーあ。亜由美は余裕だよなあ!」
窓枠を掴んで体を後ろに一歩引いた時、背中がちょっと誰かとぶつかる。
「…っるせーよ…」
小声でつぶやいて、振り返りもせずに去っていく男。
「…果凛、聞こえた?」
亜由美が私を見て言った。
「聞こえてるよ、もう…なんっかムカつくなぁ…」
A組に向かうあいつの背中を睨んで、私は答えた。
「誰?」
亜由美が私に聞く。
「……。」
誰、って。
いつからか、あいつとは険悪な雰囲気になってた…。
私の家の近所に住んでる、あいつは……『敦志』。
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