4章

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 ルールのある格闘技とは違い、殺し合いは決着がつくのが早かった。  素手で顔面を一発殴れば、大抵の人間は失神するのだ。  股間を蹴られて悶絶している間にテンカウントされて、無様に頭を落とされている者がいるかと思えば、ポケットから出した砂で目潰しをして、その隙に相手を倒す者もいた。  中でも特に注目されたのは、自分の糞を握りしめて戦う爺さんだ。糞で相手を威嚇するが、ただの痴呆症にしか見えない。もちろん一撃でダウンしていた。顎を砕かれながらも、糞の付いた手をすり合わせて必死に命乞いしていたが問答無用。あっさりと斧で頭を切断されていた。  強力な武器じゃない場合は、むしろ素手のほうが有利な時があることを知った。人間は武器を持つとそれに頼りすぎてしまい、攻撃が一辺倒になってしまうのだ。小さなナイフを使うくらいなら、無い方がマシだった。
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