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10戦目が終わった時点で、檻の中はすでに血だらけだ。血で足を滑らせて転倒し、そのまま敗北する者さえいた。僕の番が回ってくる来る頃には、長靴が必要になるくらいに血が溜まっていそうだ。
頭部を切断されたカニバたちは、切断面から大量の血を吹き出しながらも、床で手足をバタつかせるため、最前列の見物客だけではなく、その後ろの方にまで血を飛ばすのだった。
そして、僕の番。
バールを握りしめて立ち上がり、相手を睨みつけた。
対戦相手の名前はショウ。手には何も武器を持っていない。それどころか、なぜかTバック1枚である。周囲に見せつけるかのように巨大な股間を披露していた。ショウのファンと思しき男たちが「ショウ君、がんばって?」と裏声を発していた。
「あなた新人ね。超、美味しそう」ショウは艶めかしい言葉と視線を送ってきた。
「バールを突っ込んでやるよ」僕は誘いに乗って挑発した。
「あら、うれしい! ぐちゃぐちゃにしていいわよ」
ショウが格闘技の経験者であることは構えから明白だ。
そしてすぐに試合は始まった。
「経験者なの?」僕はショウの足運びを警戒しながら訊いた。
「なんの?」
「・・・・・・格闘技の」
「まあね。子供の頃は男らしさバリバリで育てられたから」
「全然役に立たなかったね」僕は足元の血溜まりを蹴り上げた。血しぶきが舞い上がり、ショウの全身を細かい水玉模様に染めたが、驚くことに一切瞬きをしていなかった。
「何してんの? 手口が古いわよ」
ショウは血の上を滑るようにして、一気に距離を詰めてきた。2キロ以上あるバールを振りかぶる余裕はなかった。
ショウの腕が僕の両足に絡まり、そのまま後ろに転倒してしまった。観戦しているカニバたちの歓声は鼓膜を震わせるほどだった。あっと言う間に二人とも全身が血で染まってしまった。
倒れた拍子にバールを落とし、それを目で追っていると、ショウは僕の股間に噛み付こうとしていた。慌てて頭部を殴ろうとしたが、まるで頭のてっぺんに目があるかのように、腕で防御するのだった。
そのまま僕は、マウントポジションを取られてしまった。
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