4章

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 周囲の目を気にすることなく、新鮮な人肉を毎日食べられることへの喜びを僕は日々噛み締めていた。  生肉は電気ショックを与えられているかのようにピクピクと動き、口の中に入れると舌の上で小さく跳ねた。カーニバル時代に食べていた人肉とは比べ物にならないくらいに旨い。加工場の生けすで熟成された肉は更に上を行く味だった。  僕が倒したショウの肉は特に絶品で、味、香り、弾力、すべてが一級品だった。見知らぬカニバに「あんな旨いやつを倒してくれてありがとう」とお礼を言われたくらいだ。  毎日30人前後の新しいカニバが島流しにされて、ここに辿り着く。1週間もすれば先輩風を吹かせられるくらいに、新陳代謝の激しい組織である。  1ヶ月が経ったが、僕が戦ったのはまだ初日だけである。そんなものだ。ロメ郎が戦っているところさえも、まだ見たことがない。  正直、退屈だった。素人同士のリアルファイトは、最初こそ予期せぬハプニングなども手伝って迫力があったが、何度も見られるような内容ではない。一発良いのが入れば、それで終わり。ジャンケンで決めたほうがよっぽど緊張感があるような戦いばかりだ。  島の北側にある物置のような学校には小じんまりとした図書館があった。津波と雨の影響で倍くらいの厚さに膨らんだ本の中から面白そうで読めそうなものを数冊選び、部屋に持ち帰っては熟読していた。1年もすれば全て読みきってしまいそうな冊数しかないが、これが僕の生きがいになっていた。
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