26人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも通りパリパリになったページをめくって読書をしていると、誰かがドアをノックした。
「開いてますよ」僕はそばにおいてあるバールを握りしめた。
「4階で男を買ってみるか?」ロメ郎は僕の部屋に入ってくるなり、そう言い放った。
「・・・・・・いや、結構です」バールをそっと床に置いた。
「何を握りしめていたんだ?」
「バールですよ」
「その前さ。どうせペニスだろ。ひとりエッチばっかりしてんの?」ロメ郎はシラフとは思えないくらいに軽いノリだ。親戚に必ず1人はいる、軽薄なおっさんみたいだった。
「まあ、そんなところです」
「最初は抵抗あるけど、男も案外いいもんだぞ。相手はプロに徹しているから、人には話さないし、先っちょに糞が付くこともない」
「・・・・・・無理っすよ」僕は真顔で首を横に振った。
「冗談だよ。そんなことよりも、今日は伝えたい事があって来たんだ」
「何かあったんですか?」
「島に送られてくるカニバの数が、少しずつ減ってきているみたいなんだ。今まではずっと30人前後で推移していたのに、先月辺りから30人を超えることが無くなって、今日に至ってはたったの25人だ。過去最低の数だよ」
「そういえば加工場の生けすも空っぽでした」
「だろ? これはかなり切実な問題だよ。昨日来た新人いわく、本土でカニバの取り締まりを弱くしたみたいなんだ。このままどんどん新人の数が減ったら、俺達はあっという間にこの世から消滅するよ」ロメ郎は腰を下ろして、冷たい壁に背中を付けていた。
最初のコメントを投稿しよう!