1章

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 花屋である。  およそ人肉とはかけ離れたショップだ。  たとえ人肉目的ではないとしても、男がなかなか入ることのない空間だ。  こんな所で人肉を扱っているとはどうしても思えなかった。  しかしそれこそが人の目を誤魔化すのに有効なのかもしれない。  店内に入ると、草花の青臭さと甘さが充満していた。 「いらっしゃいませ、なにかお探しですか?」  店の奥からメルヘンな服を着た長髪のババアが笑顔で飛び出してきた。タカラジェンヌのような濃いメイクをしていた。 「ラベンダーの色が気になって・・・・・・」僕はうつ向きながら呟くと、ババアの表情が一変。ネットに書かれていたとおりの合言葉を口にしたのだ。  花言葉は沈黙らしい。 「自分用に欲しいのかしら?」 「・・・・・・そうです」 「身分を証明できるものはある?」 「浪人生なんで、なにもないです」僕は顔を紅くしていた。 「まあ、いいわ。奥に来て」ババアは僕を店の奥に誘導した。  小さな座り心地の最悪な椅子に座らされると、花言葉が嘘みたいに、ババアは冗舌になっていた。 「花屋って儲かっているのか気になるでしょ? 花って生モノだし売れなければすぐに枯れてしまう。食べ物みたいに冷凍保存できるわけじゃないしね」 「たしかにそうですね」僕は適当に相槌を打った。 「ウチの店は葬儀屋と提携してるのよ。葬式って花をたくさん使うでしょ。凄い儲かるのよ」 「なるほど」 「だから葬儀屋とはずっと親密な関係を築いてきた過去があるのよ。そのコネを利用して最近は花を安く納品する代わりに人肉を横流ししてもらってるのよ」 「・・・・・・人肉を横流しですか」僕は目を見開いた。 「死体を棺に入れる前にエンバーミングするじゃない。いわゆる「おくりびと」よ。その時に体の後ろ側から肉を抜き取って、綿を詰めておくのよ」 「その肉を貰っているんですか」 「そうそう」ババアは嬉しそうに頷くと、中国製の白い冷凍ストッカーを開けて、真空パックされた肉の塊を取り出した。
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