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僕とロメ郎は息を切らせながら森の中を走っていた。
「あいつらまだ、戦いが終わるのを、待ってるのかな?」ロメ郎は高笑いした。
「さすがに、気づいているかも」僕は後ろを振り向いて、まだ追っ手が来ていないことを確認した。
暗闇の中、波の音と磯の香りがしてきた。
北側の海岸に着くと、髭を生やした男が僕たちの到着を待っていた。
ロメ郎と僕は、髭のそばにあるイカダを一緒に押して、海に出た。
「サメはまだ生き残っているんですか?」僕は真っ黒な海をオールでかき混ぜながら訊いた。
「でけえのが一匹いるよ」と髭。
「マジっすか・・・・・・」
「でも平気だよ」髭はそう言うと、イカダに一緒に積んでいたモノを海に落とした。
「あれって死体ですか?」
「そうだよ。サメがあれを食ってるうちに逃げられる」
波は静かだった。オールの音が闇の中で目立っている。本土の方角を見ると、島にはない懐かしい電気の光が輝き、道標になっていた。
「お!」ロメ郎が短い声を発した。
巨大なサメが海面からゆっくりと顔を出すと、海に浮かぶ死体を飲み込み、また沈んでいった。
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