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「いくらするんですか?」僕は鼻息を荒くしながら交渉に入った。
「ピンキリよ。病死した老人なら安いわよ。薬臭いし、肉もパサパサでね。あと女の肉も安いわ。若い頃から体中に石油製品を塗りたくっているじゃない。肉が化粧臭いのよ。生殖器なんて最悪よ。石鹸食べてるみたいだから」
「つまりあんたの肉は豚肉よりも安いということか」と僕は厚化粧のババアに放言しそうになっていた。
「若い男がね、もう最高よ! 肉にハリがあるし、量も多い。丁度あなたくらいの男が一番美味しいのよ」ババアは薄暗い店内で、妖艶に光る目を僕に向けていた。
「・・・・・・」僕は周りに武器になりそうなものがないか探していた。
「葬儀屋が扱う肉なんて老人ばかり。この肉も70代の老婆の肉よ。しかも病死。つまり一番安い肉ってこと。でも熱のある時なんていいかもよ。抗生物質の代わりになるわ」
「・・・・・・いくらなんですか?」
「1キロで、10万円」
「たっか!」僕は仰け反った。
「何いってんの、安い方よ。若い男の子の肉なんてキロ100万くらいする時もあるわよ」
「む、無理です。そんなお金ないです・・・・・・」僕は肩を落として、うなだれた
「でしょうね。初めからそう思ってたわよ。あなたみたいな人はカーニバルに参加した方がいいわよ」
「カーニバル?」聞きなれない言葉だった。ブラジルくらいしか連想できない。
「知らないの? 地下組織よ。そこにいけば毎週、人肉をタダで食べられるの」
「タダで食べられるんですか?」僕は信憑性の乏しい話に、簡単に食いついていた。マルチビジネスの話に目を輝かせながら聞き入る主婦みたいな反応をしてしまい、少し恥じていた。
「その代わり、厳しいルールがあるのよ」
「そりゃ、そうですよね。ケツの穴にグリースとか塗らないといけない感じですか?」
「そういうんじゃないわ。行けば分かるわよ。一見さんは入れないから、紹介してあげようか? あなたなら喜ばれるかもよ。いいカラダしてるし」
何度目だろうか。ババアは僕の体を舐め回すように見ていた。
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