2章

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 翌日は前日同様に天気が良かったが、若干肌寒かった。徐々に冬と受験シーズンが近づいてきている。模試は自信があった。人肉を食べたばかりということもあり、頭は冴え渡っていた。数学なんてすべて暗算で解けそうだった。  カーニバルの会員でこんなことを言う人がいた。 「優秀な人間の肉や脳を食べれば、その能力がギフトされるんだ。嘘だと思うだろ。そのうち俺の言ってる意味が分かると思うよ」  眉唾で聞いていたが、今なら信じられる。  僕の中で何かが変化していた。  臓器移植を受けた人の性格が変化してしまう物語を昔読んだことがあるが、あれはフィクションなんかじゃない。  模試の会場は予備校から少し離れた場所にある2流大学のキャンパスだった。僕は指定された席に座ると、参考書を開かずに、周囲を見渡していた。生贄を探していた。浪人生が1人くらい消息不明になっても、世間は驚かないだろう。人肉のターゲットとしてはうってつけである。軟弱で気弱そうな奴を探した。  テスト用紙を配るのは大学の学生がバイトでやっているみたいだった。  僕は1人の学生バイトを見て、心臓が止まりそうになっていた。  そいつは12番だった。  間違いない。昨日一緒にテーブルを囲んで肉を食べたばかりだ。忘れるわけがない。まだ僕の存在に気づいていないみたいだった。  しかし、12番がこの大学の学生であるという個人情報を知ってしまった。これは事故みたいなものだ。能動的に調べたわけではない。ペナルティーはないだろう。
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