2章

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 合計20回だった。「バキン」と指が切断されるたびに男は手足をバタつかせるため、会員に返り血が付着したが、それを気にするものは1人もいなかった。むしろ喜んでさえいた。  会員たちは切り取った指を渡されると、赤子のように口に咥えて、切断面から音を立てながら血肉を吸い込んでいた。  これくらいで死ぬほど、人間はヤワではない。次にスタッフは男のふくらはぎにナイフを縦にスッと走らせてから皮膚を開帳すると、あらわになったヒラメ筋と骨の間に指を挿し込んで隙間を作ってから、丁寧に肉を削ぎ落とした。  僕はというと、恐怖と喜びという両極端な感情が混ざりあい、複雑な心境になっていた。元カノのAVを鑑賞するような気分だ。早く肉を食べたいが、明日は我が身。死体を用意できなかった会員の無様な解体は、調味料にしてはスパイスが効きすぎていた。  数分後、男の両足はほとんど骨だけの状態になっていたが、まだ生きていた。目隠しをされているのが、せめてもの救いなのかもしれない。  男の足元に巨大なタライが設置されると、その後の展開は予想可能だった。  牛刀が腹部をかっさばく。 「バシャン」と湯気の立つ内臓が音を立てながらタライの中にこぼれ落ちると、会員は拍手喝采だ。同調圧力なんかじゃなく、みんな心からその光景を楽しみ、祝福していた。
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