2章

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「最近のトレンドは不法入国者だよ。あのへんをターゲットにするのがオイシイよ。家族に捜索願を出される心配もないし」ロメ郎は僕と目を合わせずに、タバコの灰を灰皿に捨てていた。 「不法入国者ですか・・・・・・」 「うん。その代わりしっかりリサーチしておかないとマフィアだったりするから危険だけどね。返り討ちにあうよ」 「昨日の男性はどこで手に入れたんですか?」僕は踏み込んでいった。 「自殺サイトを覗いていたら偶然発見したんだ。一緒に自殺してくれる人を探していたらしい。サイトを紹介しようか?」 「お願いします」 「自殺サイトは、カニバにとって草刈り場になっているから、急がないと優良物件はすぐに持っていかれるからね。それから有名所のサイトは避けたほうがいいよ。トラップだったりするから」 「トラップ?」僕は首を傾げた。 「自殺者を演じてカニバを誘い出して、食ってるんだ」 「カニバがカニバを食う・・・・・・ということですか?」 「そう。君も仕掛けてみたらいいよ。なんだかんだいって、それが1番手っ取り早かったりするんだよ」 「・・・・・・なんか切ないですね」 「カニバはお互いに殺し合って、いずれこの世から消えていく悲しい宿命を背負っているんだよ・・・・・・ところでさ、話が変わるけど、君をなんて呼べばいい?」 「え・・・・・・ロメ郎って名前は、ジョージ・ロメロから取ってるんですよね?」 「うん。やっぱり分かったか」嬉しそうだった。 「それじゃ、シモンと呼んで下さい」僕は顔が赤くなってしまった。 「もしかして・・・・・・ダン・シモンズからとった?」 「分かりましたか。あの人の作品が好きなんです」僕は照れ臭さを紛らわすのが大変だった。 「カーニバルの世界は、協力し合ったほうが圧倒的に有利だ。肉体的にも精神的にも。とりあえず一緒にコーヒーでも飲みに行こうよ」 「はい・・・・・・」  「模試が終わったら、ここで待ち合わせしよう」ロメ郎はそう言うと、足早に会場に戻っていった。
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