2章

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 僕はあることに気づいていた。コーヒーカップを持つロメ郎の指がわずかに震えているのだ。コーヒーの表面は波打っていたし、カップを皿に置く時に、必要以上に音がした。  以前、クールー病という単語を調べたことがある。ファミレスで後ろの席に座っていたアンチカニバの連中が話していたが、何のことだかさっぱり分からず検索したのだ。  パプアニューギニアにいる少数民族から発症した風土病のことだった。食人の習慣があった少数民族が体を震わせて笑いながら死んでいったことで世に知られることになった病気である。  アンチカニバの連中は言った。「どうせカニバたちは脳がスポンジみたいになって震えながら死んでいくんだよ」と。  実際、カーニバルに出席しても、会員達はみんな笑顔だ。目の前にいるロメ郎も終始にこやかである。病魔がゆっくりと我々カニバに忍び寄っているのだろうか?  「この人なんか、どうかな?」ロメ郎は目に止まった自殺志願者の1人を紹介してくれた。
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