2章

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「どんな感じの人ですか?」僕は腰を浮かせて、ロメ郎の携帯を覗き込んだ。 「仕事に疲れた30代の男性。一緒にドライブがしたいんだってさ。ドライブというのは練炭自殺という意味の隠語だよ」 「情報が少なくないですか?」 「ここから個人的にメールでやり取りをして煮詰めていくんだよ。みんなが読めるネットの掲示板で死に場所を書いて相談したら、大変なことになるよ」 「そ、そうですよね」僕は頭を掻いた。  ロメ郎は僕の許可を取らずに勝手にその自殺志願者にメールを送っていた。返事はすぐに返ってきた。 「一度会いませんか? だってさ」ロメ郎は携帯をひっくり返してメールの文面を僕に見せた。 「それは一緒に死にましょうという意味の隠語ですか?」 「いや、本当に一回会いたいだけだと思う」ロメ郎は笑っていた。 「友達から始めようって言われても困りますよ」 「会うだけ会えばいいじゃない。すべり止めとして確保しときなって」 「トラップだったらやばいし・・・・・・」 「その時は、返り討ちにして食ってやろうぜ」  ロメ郎は弱気な僕に兄のように振る舞っていた。まだお互いの年齢も知らないのに。
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