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僕とロメ郎は男を風呂場に残したまま、2人だけのリッチな食事会を開いた。
「あ、僕やっぱり赤身が好きです。今日それがはっきりしました。日々鍛え抜いてきた男の味は、その苦労に比例していますね」僕は数日ぶりに発見された遭難者みたいに、ガツガツ食べ続けた。とにかく飽きが来ないのだ。
「最近の牛肉は、霜降り至上主義みたいなのがあるじゃない。でもやっぱり肉の味を楽しむのは赤身だよな。人肉も同じだよ」ロメ郎はそう言うと、キッチンから小さな鍋を持ってきて卓上タイプのIHに乗せた。
「なんですか、それ?」僕は背筋を伸ばして覗き込んだ。
「脳フォンリュだよ。脳みそを沸騰させたんだ。チーズフォンリュの要領で肉をくぐらせて食べてみ。マジで旨いから」
僕は言われるがまま、沸騰している黄色い液体の中に肉をくぐらせてから口に運んだ。
「んま・・・・・・」僕はため息を漏らしながら言葉を続けた。「大昔の人間って人肉を食べていたらしいじゃないですか。それがいつの間にかタブーになって」
「うん」ロメ郎は夢中になって食べていて、上の空だったが、僕は続けて話した。
「人間が美味しすぎることを隠したかったんでしょうね。その事がバレたら、殺し合って人類が滅亡してしまうから」
「かもしれないね。でもそれは結構前から言われていることだよ・・・・・・話が変わるんだけど、明日カーニバルを開いてもらったとしたら、明日の朝に風呂場の男を殺さないといけなくなるんだけど、シモン君が自分でやるよね? 人生最初の殺人」
「・・・・・・そうですね」僕は現実に強引に引き戻されていた。
「慣れておいたほうがいいよ。カーニバルでは基本的に窒息死が推奨されているけど、普通に首を絞める? それとも水に沈める?」
「絞めようかな」
「わかった。それじゃあシモン君の初めての殺人に乾杯しよう」ロメ郎は上機嫌で血にウォッカと炭酸を混ぜた特製サワーを作っていた。
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