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「誰か来る予定だったんですか?」僕は緊張で顔が赤くなっていた。
「いや、誰とも約束してないよ」ロメ郎は立ち上がると、足音を立てずに玄関に向かい、覗き穴に右目を付けた。
僕は風呂場に隠れることにした。電気をつけずに風呂場に入ると、防水加工された曇りガラスの扉から入ってくる心細い淡い明かりだけが頼りだった。
「なんかくせーな、お前の部屋」と聞き覚えのない男の声が聞こえた。
どうやらロメ郎は断りきれずに部屋に友人らしき人物を上がらせてしまったらしい。
僕はというと、糞と血が混ざったむさ苦しい暗い空間で、1人たたずんでいた。ここを開けられたらすべてが終わりだ。
「んんんん!」バスタブの中で死を待っていたタトゥー男が、状況を把握したらしく、唾液でベチャベチャになった猿ぐつわを震わせながら、ありったけの声を出した。男にとって僅かな淡い希望の光になっていたのだろう。
僕は男の顔面を殴打した。
暗いため遠近感が分からず、目の部分を殴っていた。
それでも男は吠えるのを止めなかった。第一声よりは幾分ボリュームが下がっていたが、このままでは見つかるのは時間の問題である。
男の後ろに回った。肉を回収されて体中の骨が見えるくらいにボロボロになった共犯者を間に挟んで、首を後ろから絞めた。
「何の音?」部屋から友人の声と、必死に誤魔化しているロメ郎の声が聞こえてきた。
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