2章

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 男はほとんど抵抗らしい抵抗をせず、両腕をぶらりと下げた。  今日は誕生日の次に覚えておかなくてはいけない記念日になるのだろう。  初めて人を殺したのだから。  それにしても、一体いつになったら友人は帰るのだろう? 聞き耳を立てていたが会話は聞こえてこなかった。もう帰っているのだろうか? いや、それならロメ郎は「帰ったよ」と教えに来てくれるだろう。  最悪な状況を想像していた。さっきの友人が実はロメ郎が呼んだカニバ仲間で、2人で結託して僕を殺そうと相談しているのではないだろうか、というもの。すべてがロメ郎の罠だったとしたら僕は相当な間抜けだ。カーニバルが「互いの素性を詮索してはいけない」というルールを作ったのは、こういうことだったのだ。 「おい、シモン君・・・・・・」  ロメ郎がそう言いながら突然風呂場の扉を開けた時、僕は驚きのあまり漏らしそうになっていた。ロメ郎の手には包丁が握られていたのだ。 「・・・・・・」僕は何も言わずに後ずさりし、武器になりそうなモノを探していた。 「ヤバイことになった・・・・・・」ロメ郎の表情に殺意はなかった。 「ヤバイことって何ですか」 「あれ? そいつ殺したの?」ロメ郎は僕の質問には応えずに、バスタブの男を指差した。 「はい・・・・・・音を立てようとしてたんで」 「そっか、殺っちゃったか・・・・・・実は俺もなんだ」
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